Prologue - Mission Statement –

今まで私は、ラジオ番組の一制作部員として、2種類の系統の番組に携わってきた。
1つは、海外の旬でローカルな「情報」にフォーカスを当てるもの。
そしてもう1つは、伝統と革新というキーワードを軸に、様々なジャンルで世界的に活躍する「人々」にフォーカスを当てるもの。

番組を創っている間ずっと、
「これ、ラジオじゃなくても、しかも私でなくても、出来ることなんじゃ?」と感じながらも、持ち前の好奇心と社交性、負けん気の強さで、熟考する間もなく突き進んで来た。
色々と考える時間が出来た、いや、というより、半強制的に時間が出来てしまった、その瞬間(とき)までは。
番組が終了し、ホームページが閉鎖されて始めて、
これまで見えていなかったことが視界に入り、考えなかったことを思考始めた。
俗によく言う、人間が往々にしてぶち当たる壁なのか、はたまた岐路なのか?
30歳を過ぎ、ようやく、他人と相対的に生きるということ、周りの人あっての自分だとか、幸せは自分の中にあるということ、社会と自分の関係、そして地球という大きな枠組みの中での己の位置づけというものに対して、意識し始めた、矢先。

ふと、押井守監督の言葉が脳裏を過ぎった。自分の幸せや自由の出発点、それは、他人を背負って生きるということ:

自分が人生の中で出会ったもの・・・決してその中でしか生きられないんだから。自分が関わり合いを持った人間を大事にするんだっていう、これから誰に出会うんだろうって言う期待感で生きるんじゃなくて、既に自分が出会った誰を大事に生きるのかって。そっちの方がよほど現実的であって多分可能性という言葉を正確に使うとすれば可能性が高いと思う。これから出会うかもしれない誰かを待つのか、自分が既に知っている人間と改めて出会うのかって、どっちが大事だと思う?

私の場合、その”出会い”は、殆ど全てと言っていい程、メールやSNS,知人や然るべき機関からの紹介というカタチで始まった。少なくとも週に一度、始発(もちろん時差にもよるが)電車に揺られ、一人収録スタジオへ。午後中にインタビューを終え、元気一杯・フル充電の状態で帰宅するという生活が数年続いた。慣れるまでに大して多くの時間を要さなかった。
全くもって陳腐な表現<Cliche>なのだが、皆どこにいようと、何をしていようと、
どんな異なるバックグラウンドを持っていようとも、この大きな地球船に乗って、今という時間・空間を精一杯生きていた。世界中に散在するワーキングジャパニーズウーマンたちの存在の事実に、驚愕した。
一度、或いは数回お会いしたことがある方々も、相変わらず電話やメール、チャットのみという方々も、皆さん:

確固たる自分を持ち;
生きるベクトルが前&上向き onward and upwardで;
良い意味で現状に不満、それゆえチャレンジ精神旺盛;
逆境において発揮される人間の底力を信じ、
女性であること、年を取るといったことに楽しみ上手;
周りの人々に与えたい、伝えたいという強い気持ちや
社会・環境への高い関心を持ち;
ブランド・ネームバリューより本質、本物志向で;
日本人のアイデンティティを一時も忘れず、日本人独特の感性や伝統文化を大切にしている。

相違点よりも多くの「共通項」たちを目の当たりにした。

そんな彼女たちが口を揃えておっしゃる。「価値観を伝えたい」と。
喩えて言うなら、日本のスーパーで当たり前のように売られている、パッケージ化され一つ一つ均一の様相のジャガイモやピーマンの袋は、海外では決してそうではないかもしれない、ということ。香港の屋台やパリのマルシェに行けば、パッケージ化されているどころかそれぞれ異なる形や色のジャガイモやピーマンが山積みになっていて、己の経験値や判断能力という物差しでもって、取捨選択しないといけない。
情報のフルーツ・バスケット。
何千曲も入っているIpodのシャッフル機能をフル活用するか、或いは一曲一曲選択してゆくのかは、貴方次第。情報過多の現代において、従来の、物事を客観的に捉え、それを伝えるという形態のジャーナリズムはもはや瀕死の状態。それこそ、一人のファッション・ブロガーや、マーク・ジェイコブスやカール・ラガーフェルドといった有名ファッションデザイナーたち自らがブランド・アイコン、ステイトメントとなり、消費者へ直接リーチ&コミュニケーションしている。

残りの人生30年間、私だから、そしてこんな今だからこそ、できること。
それは、新たな出逢いに胸躍らせて生きるのではなく、これまで巡り合った星のかけら一つ一つを大切に手に取って、個々が放つ煌きや声に改めて触れ、それらをもっと目に見えるカタチ、後世に伝承可能なフォーマットへと進化させるということ。
シンプルで力強いコンセプトを元に、その「人」ならではの個性・視点に特化した情報やメッセージそのものに付加価値を見出し、人と人が生み出すエネルギーやシナジー効果(即ち1プラス1は3)にスポットライトを当てたい。
ふと、バレエのエトワール、プリンシパルたちと彼女たちの姿を重ね合わせる。
究極の人間美や真の意味で女性らしさを追究した伝統的アートフォーム・バレエ。優雅な物腰に、細く長く伸びた手足。オンステージであってもオフステージであっても、身体の軸、芯は真っ直ぐのまま変わらない。年老いても背筋をピンと張って、階段を数段跳び越して上ってゆく姿。

いわゆくば、海外在住・日本人女性のネットワークという枠組みにとどまらず、彼女たちのココロの拠り所、アイデンティティであるここ日本で、女性たちがいつ何時でも気軽に立ち寄って、互いに語り合い、元気はつらつと各々の活動の地へと旅立ってゆける様な、そんな基地的空間、応援・母体をプロデュース出来れば。更に、これから世界へ羽ばたいてゆく女性たち・若者たちに向けて、何らかの応援エールやアドバイス、幸せ探しのヒントを発信するフォーラムを提供できれば、これ以上嬉しいことは無い。自分という人間が今まで生きてきて、今を生き、今から生きるための、大きな理由。
と同時に。私の身体は、これまで感じたことのない重責感やプレッシャー、使命感で漲っている。お一人一人の熱い思い、彼女たちの人生の一部を背負って。
一生一代、私の重要なミッション。
 


 




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